『2004/7月 第324回 読書会の報告』
7月24日 短編小説『雪解』
にっぽん 昭和21年4月号 日本社
芹沢光治良文学館10 短編集「死者との対話」 新潮社 平成9年4月10日発行
司会:河原崎徳之 参加者:20名
短編小説であるが、「女性の自立」「教育」「嫁姑問題」などのテーマが含ま
れており、多くの意見が出された。
また、表題の「雪解」に対する解釈も"咲子の自立"、"戦争の終わり"、"嫁と姑
と関係"など人によりさまざまであった。
この他に東京に戻った後の咲子の生き方について活発な意見が交わされた。"教
員となり立派に生活した"、"教員に戻っ
ても苦しい生活であった"、"必ずしも正しい人生とはならなかった"など主人公
の将来をいろいろと想像させる作品であった。
この点も作者が意図したところであるかもしれない。
以下に当日述べられた意見を羅列します。
(発言より)
・戦後半年の混乱のときで、咲子と同じ境遇の人が多くいる。この作品は、それ
らの人々に対する激励である。
・「教育」がテーマとして語られている。人は苦労によって育つという親の教
育。
・戦争も社会教育の一環としてとらえている。
・新吉が招集され残された妻の気持ちを思うと胸が痛くなる。
・亡くなった人はよい記憶しか残らないことを感じた。書き方の流れが面白い。
・その当時の庶民の生活を描いていて後世にとっても貴重である。
・共働きの女性の一つの生き方を描いている。
・咲子が今の境遇を脱して自立することを「雪解」としているのではないか。
・個々の人の生き方、人間像が浮き彫りにされている。
・戦後の女性の生き方を書いている。嫁と姑の関係を見てもこの時代の嫁の大変
さが分かる。
・軽井沢では秋が来ると寂しくなり冬が来ると東京に戻りたくなる。
・人生において、よく見えることには悪いことが潜んでいることがわかる。
・「女性の自立」「嫁と姑」「教育」の3つがキーワードである。
・生活苦だけでなく姑の言葉がつきささるので東京に戻る決心をしたのだろう。
・自然の表現描写が美しい。
・新吉が戦争のために夢がかなえられなかったことに同情する。
・姑の知恵が参考になった。
・咲子の生き方を自分に置き換えて考えた。
・過去からの流れを見て、これからの時代をいかにもっていくべきか考えるのが
現在に生きる者のつとめである。
・「雪解」は和解しない嫁と姑の対立および戦争が終わったことの意味がある。
・結婚前に相手の家の様子がわからないという設定はおかしいのではないか。
・日常生活の描写がうまい。
・咲子が東京に戻った後の生活を読者に考えさせられる。
・母が生活力があり、知恵がある。
・単語の使い方が面白い。
・主人公がこの当時としては高学歴の女性であり、一握りの世界ではないか。
・嫁と姑のもっと醜い争いがあってもよいのではないか。
・戦争未亡人への応援歌である。
・八方ふさがりの生活から抜け出したいことを「雪解」と表現している。
・戦時中の人々の真剣な生き方を書いている。
・主人公の結婚に対する考え方が変わり、夢が崩れても環境にあわせてしまう。
・咲子の父の教育が立派である。
・戦争の不条理、最後の描写がやりきれない。
・母は息子の死により精神的打撃があるはずだが生活があるので耐えている。
・咲子を東京に追いやることが母の愛とも考えられる。
・親に送金することのこの当時の状況に驚かされた。
・混乱した中でリアリティのある真実の人間の姿を描いている。
・夫婦として理想的な姿である。
・姑との関係も長く同居するとお互いの面が見えてきておぞましく感じられた。
・「雪解」は夫の戦死、姑との争いからの新たな出発を表している。
・八方ふさがりなここより東京で飢えたいという咲子の叫びが「雪解」の新たな
出発を表している。
・「〜すべき」という女性のしいられる生活と自立する自分との葛藤を表した作
品である。
・同じ苦しむなら東京で自立しようという女性の生き方がでている。
・当時の芹沢氏が軽井沢から東京に戻る本当の気持ちが現れている。
以上